玄関をまず入ると開放的な吹き抜け
吹き抜け部分は回廊になっており、個人邸宅のためか、回廊部分に柱がありません。ここでしか見ることができない珍しい造りになっています。西洋館として公開してからは、一ヶ月に一回第2金曜日に、回廊の一般公開を行っています。午前1回、午後1回。当日来ていただければ、2階を見学することができるそうです。
いろいろなところにある収納
ファミリーのために作られているからか、とても住みやすいように設計されている。特に注目したいのが収納の多さ。「こんなところにも!」といった発見があります。限られたスペースを使って収納にしたり、参考になるところもあるのではないでしょうか。リビングといった、お客様のおもてなしに使われる部屋のスチーム暖房には、小花が掘られた飾り棚をかぶせるなど、配慮が行き届いています。住む人のことを第一に考えた設計がとてもあたたかく、設計したJHモーガンの人柄もうかがい知ることができます。
2階の午睡室(スリーピングポーチ)と寝室の窓から見る景色は格別
広々とした1階にくらべ、2階は寝室と、午睡室となっています。午睡室はいわゆるお昼寝のためのお部屋。当時はラフィン氏の庭の先に海が広がっていたのが見えたのだそう。とても景色のよいところでまどろむのはとても気持ちよかったのだろうなと想像します。窓枠と景色とが合わさって、まるで絵画のよう。現在では寝室部分は会議室として利用されており、2階から1階のホールを見ると寄木細工の美しさが際立ちます。
裏手に広がるローズガーデンとCafe the Rose
正面から見ると2階建てだが、後ろのお庭から見ると3階建て。というのも山手の土地は傾斜があるので、土地の特性に合わせて設計されています。 地下テラスはCafe the Roseという喫茶スペースになっています。地下といっても地上に面しており、港の見える丘公園のローズガーデンを見ながらゆっくりとすることができます。バラの紅茶や手作りのケーキで午後のティータイムはいかがですか。
山手111番館を建てたラフィン氏のお父様と建築家モーガンにはあるロマンティックな共通点があります。それは二人とも日本人の女性に一目ぼれして結婚しており、山手の外国人墓地に眠っているということ。
航海中に船のトラブルで修理が必要になり、たまたま横浜港に降り立ったラフィン氏のお父様は、修理を待つ間、箱根に出かけそこでのちに夫人となるミヨさんと出会い、一目ぼれして大恋愛をしたとか。そして日本に残ることを決意します。結婚後は8人の子供たちと横浜で暮らしたそうです。一方、建築家モーガンは、もともと東京の丸ビルを設計するために来日していましたが、来日してすぐに東京ステーションホテルで英語の本を読んでいた石井たまのさんに一目ぼれしたそうです。たまのさんは私生活のパートナーであったのみならず、秘書兼通訳としてモーガンの日本での設計活動をサポートしました。モーガンは外国人墓地の門、山手聖公会、ベーリックホールなどの設計もしていて、在留外国人建築家として横浜で活躍しました。
多くの人に心のこもった西洋館を感じてほしい
案内してくださった古屋館長。「山手111番館は吹き抜けがあるので、コンサートをすると音響がとてもいいんです。横浜市に住んでいてもなかなか来る機会がない方もいると思いますのでぜひいらしてください。館内には座れるところがたくさんあるので、ぜひくつろいでいってほしいです」